水耕栽培用肥料

 1.水耕栽培用の肥料を使う

原則として水耕栽培用の液体肥料を使います。通常ホームセンターや百円ショップで売っている液体肥料は土耕栽培用の液体肥料であり、ミネラルなどの成分が欠ける場合があり使えません。14種類の元素が過不足なく含まれる水耕栽培用の肥料をお勧めします。

水耕栽培専用肥料として代表的なものはハイポニカ(協和株式会社)と大塚ハウスです。ハイポニカは最初から液体濃縮液になっており使いやすいのですが高額です。一方、大塚ハウスの場合は粉末肥料で水に溶かして液体濃縮液を作る方式で低額です。なおいずれも2種類の濃縮液を準備し、必要な濃度に薄めて養液を作ります。通常の家庭菜園ではハイポニカではA液とB液、大塚ハウスでは1号と2号を使います。

2.肥料はネット通販を利用して購入

水耕栽培用の液体肥料は一般のホームセンターでは売っていないので、ネット通販を利用して購入します。その際は送料と使用量を考慮して選びます。

(1)楽天市場の相場

・ハイポニカ:A液B液1000mlセットで3148円(税込み3400円)
・大塚ハウス1号2号セット:400ml分(1号90g、2号60g)×3で1404円
・大塚ハウス1号10㎏で4990円(税込み5386円)
・大塚ハウス2号10㎏で3000円(税込み3240円)

 (2)アマゾンの相場

・ハイポニカ:A液B液1000mlセットで2230円(配送無料)
・大塚ハウス1号2号セット:1号300g、2号200gで1500円(配送無料)

(3)ヤフーショッピングの相場

・ハイポニカ:A液B液1000mlセットで1706円(税込み)
・大塚ハウス1号10㎏で6254円(税込み)
・大塚ハウス2号10㎏で3981円(税込み)

中島ハウス
大塚ハウス3種セット 800L
大塚ハウス1号 600g
大塚ハウス2号 400g
大塚ハウス5号 20g
三種セット送料込みで1000円。

 3.大塚ハウス1号2号濃縮液の作り方

 (1)大塚ハウス1号2号の粉を小分けする

最初は少量タイプで試してみた方がよいでしょう。例えばヤフーショッピングの中島ハウスでは比較的安価に少量分販売しています。

そして本格栽培する場合は大塚ハウス1号10㎏、2号10㎏を購入し、ビニールのストックバック(100円ショップでSサイズ43枚入のもの)に150g、100g単位であらかじめ小分けしておいて、必要時に1リットル単位で濃縮液を溶かして作ります。これは長期間粉で放置した場合、吸湿によって重量が変化する可能性があるため、あらかじめ小分けしておくものです。

(2)濃縮液用ペットボトルに目盛りをつける

1号と2号用の濃縮液を入れる2リットルの空のペットボトルを2個準備します。そして計量カップに200ミリリットルの水を入れ、ペットボトルに入れてマジックで目盛りをつけます。これを5回繰り返し200ミリリットル単位で1000ミリリットルまでの目盛りをつけておきます。5本の目盛りをつけ終わったら水は捨てます。
これは通常濃度の養液を作る場合濃縮液200ミリリットルを40リットルの水で希釈するので、あらかじめ200ミリリットル単位で目盛りをつけておくと使いやすいからです。
目盛りをつけた空のペットボトルにはそれぞれ1号、2号とマジックで書いておきます。

 (3)濃縮液を作る

1号の空の濃縮液用ペットボトルにロート(漏斗)を使用して大塚ハウス1号の粉150gを入れます。ロートに粉が残るので水道水を少しずつ入れて、150g全部ペットボトルに流し込みます。そして最終的に1000ミリリットルの目盛り位置まで水道水を注ぎます。
次にペットボトルのキャップをしっかり閉め、カクテルを作る要領でペットボトルを激しくゆすり、粉を溶かします。肥料の粉が溶けにくい場合は水道水を温め、ぬるま湯を使用してもよいでしょう。
2号用濃縮液も、大塚ハウス2号の粉100gをロートを使用して水道水とともにペットボトルに入れてから振り、同様に作ります。

なお、水道水の塩素が気になる場合はカルキぬき(100円ショップの金魚用品売り場にあります)を入れて中和します。濃縮液を希釈して養液を作る場合も塩素が気になる場合はカルキぬき(チオ硫酸ナトリウム)を使います。塩素は野菜の根に害があるのですが、通常の家庭菜園レベルでは自然に塩素が抜けるのであまり心配する必要はないと思います。私は金魚を飼っているのでカルキぬきは持っていますが、野菜栽培には使っていません。

4.水耕栽培用肥料はやや高い

家庭菜園では水耕栽培用肥料をどの程度使うか計算してみます。
たとえばハイポニカ:A液B液1000mlセットの場合、通常500倍希釈で使いますから500リットル分の養液が作れます。トマトやキュウリは実が成りだすと一日5~10リットルぐらい消費しますので、一株でもひと夏しか持ちません。ただしレタス等の葉物野菜では成長期でも一株一日数十ミリリットルと消費量が少ないので大量栽培しても長期間持ちます。肥料は栽培する野菜の種類と量を計算して購入すべきでしょう。ハイポニカを使った場合はトマト一年一株100個収穫として1個当たりの肥料コストは20円ぐらいでしょうか。水耕栽培では葉物野菜の肥料コストはあまり問題にならないのですが、トマトなどの実物野菜では肥料コストを十分計算すべきです。レタスなど葉物野菜は捨てる部分が少ないのに対して実物野菜は食べない葉や根部分にも養分がとられるため肥料代がかかるのです。家族に「買った方が安い」と言わせないようにしっかり原価計算しましょう。

大塚ハウス1号10㎏2号10㎏を購入した場合は1号150g、2号100gをそれぞれ水で溶かして1リットルの濃縮液を作るので、1号10㎏の粉で67リットル分の濃縮液が作れます(2号10㎏の粉で100リットル分)。この濃縮液を通常は200倍に薄めて使いますから1号10㎏の粉で13333リットル分の養液が作れます。ハイポニカ:A液B液1000mlセットの場合と比較して27倍の養液量となります。これだけあると、かなり規模の大きい家庭菜園で一日13リットル使用するとしても1000日分、すなわち数年は持ちます。ハイポニカと比較して4~5分の1のコストです。ただし1~2年で家庭菜園に飽きそうな場合は処分に困るのでよく考えた方がよいでしょう。

なお、大塚ハウス1号2号セット:1号300g、2号200gの場合は濃縮液各2リットル分ですので200倍希釈で、400リットルの養液となり、ハイポニカと同程度のコストです。少量の場合はいずれにしても実物野菜の場合は肥料代が高くつきます。

以上、生産する野菜の種類と量を計算して適切な液体肥料を選択します。水耕栽培用の液体肥料と比較すると土耕栽培用の化学肥料は安いので、固形肥料を水で溶かし、さらに大塚ハウス5号などでミネラル分を追加させるなどして、肥料代を節約する手法を考えるのもおもしろいかもしれませんが、それは水耕栽培に習熟してからのことです。

 5.濃縮液を希釈して40リットル単位で養液を作る

大塚ハウスの濃縮液は1号2号別に1リットル単位でペットボトルに作っておきますが、希釈して養液を作る場合は45リットルのペール(バケツ)に40リットルの水道水を注ぎ、1号2号それぞれ200ミリリットルの濃縮液を入れ、かき混ぜます。濃縮液はペットボトルの目盛りを利用するか、または計量カップを使って測ります。
ハイポニカの場合は40リットルの水道水にA液B液それぞれ80ミリリットルの濃縮液を入れて使います。
イチゴなど一部の野菜では上記の半分の濃度にする場合もありますが、ほとんどの野菜では上記の希釈でOKです。なおトマトなど甘みを高める場合などは濃度調整をする場合があります。この時はECメータがあれば便利です。
さらにトマトなど長期間生産しているとPHが変わってくる場合があるので、PH計があれば便利ですが、通常は必要ありません。糖度計を含めた計器類の使用法については別途解説します。

養液の貯蔵に45リットルペール(バケツ)をお勧めする理由は、夏期に一種間程度、旅行や帰省で留守にしても自動給水に必要な貯水槽の容量を計算すると、トマト一株でも45リットルペールを2つ並置しなければならないほどです。水耕栽培では車一台程度置けるスペースの家庭菜園でもかなりの収穫が見込めますが、それに使用する養液の量もかなり多く、本格的に生産する場合は45リットルペールを何個も必要とします。
私の場合は夏期でも養液のセットは一週間に一度と決め、自動給水しているので、最盛期は45リットルペールを10個ぐらい使用します。一週間に一度しか作業しない無人水耕栽培では貯水槽の容量が決め手となります。